タバコ、アルコール、運動不足、肥満、高血圧、糖尿病など健康に影響を与えるものは多くあります。その中でタバコが最も健康に影響を与えるとされています。タバコは心筋梗塞や脳卒中、がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といった病気の原因となり、死亡につながります(1)。
「今さらタバコをやめてもしょうがない」というご意見をいただくこともあります。果たして、それは本当でしょうか。確かに、40歳以前に禁煙したほうが死亡への影響は大きく下がります。しかし、80歳でもリスクは下がることが知られています。
また、COPDの初期であれば、タバコをやめることで咳(せき)や痰(たん)が減ることが期待できます(2)。
加熱式タバコや電子タバコはどうかというご意見をいただくこともあります。
加熱式タバコはタバコ葉を利用しており、ニコチンが含まれています。紙巻きタバコよりニコチン量が少ないことが多いですが、紙巻きタバコと同程度のニコチンを含む製品もあります。また、量は少ないものの、副流煙にもニコチンが含まれています(3)。
日本国内で販売されている電子タバコは、個人輸入品を除き、ニコチンやタールが含まれていません。このため、紙巻きタバコと比較して、がんなどのリスクが低いことが予想されます。しかし、電子タバコによって肺の病気が起こった報告があります。また、電子タバコの販売期間が短いため、長期的に安全かどうかはわかっていません。
これらのことから、禁煙することが最も望ましく、加熱タバコや電子タバコの利用はリスクを下げるかもしれませんが、何らかの健康被害が起こる可能性はあります。
禁煙しようと決意したら、どのようにしたらよいでしょうか。1人で禁煙を試みることも可能ですが、禁煙外来を受診することをおすすめします。禁煙外来は12週間の内、計5回受診する必要があるため、通院が大変です。しかし、禁煙外来は薬による治療と医師との面談の2つによって、1.8倍禁煙しやすいという効果が期待できます(4)。
1) Ikeda N, Saito E, Kondo N, et al. What has made the population of Japan healthy?. Lancet. 2011; 378(9796): 1094-105.
2) Rigotti NA. Benefits and consequences of smoking cessation. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed on Nov 1, 2023.)
3) 厚生労働省. 加熱式タバコにおける科学的知見. [cited 1 Nov 2023]. Availablefrom: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000201435.pdf
4) Rigotti NA. Overview of smoking cessation management in adults. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed on Nov 1, 2023.)