会社の健康診断などがきっかけで、血圧・血糖・コレステロールなどが高いことに気づき、当院を受診される方がいらっしゃいます。家族や知り合いがすでに薬を飲んでいるため、ご自身も薬を飲む覚悟で受診される方がいらっしゃる一方、薬を飲むかどうか悩みながら受診される方もいらっしゃいます。薬を飲むかどうか悩んでいる方からいただく質問の1つに『薬を一度始めるとやめられませんか?』があります。この質問をされる方は下記に記載したメリットを理解しつつも、デメリットに負担を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
(薬を飲むメリット)
・治療の対象になっている血圧などが正常値になります。
・脳梗塞や心筋梗塞など重篤な病気になる可能性が減らせます。
(薬を飲むデメリット)
・毎日薬を飲まなければならなりません。
・定期的に病院にかからなければならなりません。
・診察料や薬代など医療費の自己負担があります。
私はよく、『薬をやめられることはありますが、やめられる人は多くないです』とお話しております。
昔の研究で、肥満の方に栄養指導を行い、体重4.5kg減、塩分摂取量36%減、飲酒量減を達成した方のうち39%が高血圧の薬をやめられたという報告があります(1)。
実際に、ここまで厳格に生活を変えられる方がどれくらいいらっしゃるでしょうか。一方、無理なくできる範囲で歩いたり、間食に気をつけたりしながら、薬も併用して血圧・血糖・コレステロールなどを目標値に下げることは多くの方が目指しやすいゴールではないでしょうか。
病気の向き合い方はお一人お一人で異なります。上記のような考え方がベースにはありますが、ご相談しながら治療を行っていきたいと思います。
※ 本記事は岡田 悠が医師個人の経験に基づいて記載している点が多くございます。このため、当院以外がかかりつけの方は、かかりつけ医のご意見を確認いただき、ご自身にあてまはるか御判断くださいますようお願い致します。
1) Rose S, Jeremiah S, Richard G, et al. Nutritional Therapy for High Blood PressureFinal Report of a Four-Year Randomized Controlled Trial— The Hypertension Control Program. JAMA. 1987; 257(11): 1484-1491.