誰にでも、どの家族にもはじめて経験することがあります。そのうちの1つに出産・育児があります。
出産によって夫婦2人の関係から、小さな子どもがいる家族に変わっていきます。夫婦は仕事と家事だけでなく、育児も行わなければなりません。育児はやりがいがありますが、予想外のことも多く起こり、さまざまなことに悩むことがあるでしょう。
私は最初の子が生まれたときに、小児科医として勤務していました。
子どもが生まれる前は子育てを完璧にこなせるように思っていましたが、実際は違いました。
私がはじめて娘をお風呂にいれたとき、娘の顔に水をかけすぎて、妻に怒られました。
生後3ヶ月まで、深夜1-3時に夜泣きしている娘をあやすのは私の役目でした。娘をあやすのに、小児科医の知識は何一つ役に立たず、一生懸命がんばるしかありませんでした。そして、生後4ヶ月には仕事との両立が難しくなり、妻にその役目をお願いせざるをえませんでした。
その後も、息子のおちんちんの皮をむきすぎて亀頭包皮炎を起こしてしまったり、息子の手をひっぱって肘内障を起こしてしまったりと小児科医らしからぬトラブルを経験しました。
皆様は育児に悩んだときに、どのように対応されますでしょうか。藤尾らの研究(1)によると、育児に困ったときに誰かに相談する人が93.7%と多く、次にインターネットで調べる人が77.2%とされています。相談相手は両親、夫、友人がそれぞれ70%台であり、医療関係者は医師10.6%、看護師5.6%、助産師4.5%と低い傾向にあります。医療関係者が相談相手に選ばれづらい理由に、「育児よりも病気のときの相談相手である」、「育児の相談をしてよいかがわからない」という意見があげられています。
確かに、病気以外のことは、私よりも家族や友人のほうが詳しいことも多いでしょう。一方、「そもそも病気なのかどうかがわからない」、「○○をしないと病気にならないか心配」、「どこに相談したらよいかわからない」といったことは、育児経験のある小児科医にご相談いただければ解決できることも多いと思います。私自身、いろいろと失敗してきたからこそ、皆様が医師に相談してもよいのかなと感じるささいな悩みにも答えていきたいと思っています。お気軽にご相談いただければ幸いです。
【生後4ヶ月までのアドバイス】
・生後2ヶ月から予防接種がはじまります。
・生後3ヶ月までの発熱は早めの医療機関受診が勧められます。
・生後4ヶ月に、4か月児健診があります。
・生後4ヶ月までは母子手帳の便色カードをみて、便が灰白色~クリーム色(1番~3番相当)でないか注意します。この便色カードが対象とする胆道閉鎖症は早期発見が大事な病気です。
- 藤尾順子,山内京子,進藤美樹. 「子育て中の母親が期待する小児科診療所の看護師の役割に関する実態調査」. 看護学統合研究. 2016; 17(2): 33-40.
- 山本久美子,今井多樹子. 育児経験のある看護師が語る小児看護に対する認識の変化. 日本小児看護学会誌.2019; 28: 10-18.