鼻に噴霧することで接種できるインフルエンザワクチン、フルミスト点鼻®が、厚生労働省から国内での製造販売承認を受けました。これまでは一部の医療機関が個人輸入で使用していたものですが、2024年度から国内の医療機関で正式に使用できるようになりました。
フルミスト点鼻®の特徴として、針を使用しないため「痛みがないこと」や、2~12歳のお子様の接種回数が「1回で済むこと」が挙げられます。一方で、「生ワクチンであること」や「接種費用がやや高くなること」が注意点となります。
当院でフルミスト点鼻®が接種できない方は以下の通りです。これらのいずれかに該当する方には、従来のワクチンを推奨いたします。
・過去4週間以内に生ワクチン(麻しん風しん、水痘、おたふくなど)を接種している方。当院での同日接種は可能。
・気管支喘息や1年以内に喘鳴(ぜんめい)のあった方
・鶏卵によるアナフィラキシーやゼラチンアレルギーの既往がある方
・心臓・肺・腎臓・肝臓・血液・代謝疾患、糖尿病、免疫不全や発育障害、髄液漏(ろう)などの基礎疾患がある方
・人工内耳を装用している方
・アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニン®など)、ステロイドや免疫抑制剤を内服している方
・妊婦、または妊娠の可能性がある方
・重度の免疫不全者と同居している方
・抗インフルエンザ薬の内服歴がある方:オセルタミビル(タミフル®)やザナミビル(リレンザ®)は48時間以内、ペラミビル(ラピアクタ®)は5日以内、バロキサビル(ゾフルーザ®)は17日以内
上記の条件に該当しなくても、接種当日に37.5℃以上の発熱、鼻汁、鼻閉がある場合には、接種を延期することがあります。
フルミスト点鼻® | 従来ワクチン | |
対象年齢 | 2~19歳 (2~12歳がおすすめ) | 生後6ヶ月以上 |
接種方法 | 両鼻に1回ずつ噴霧 針を使わない | 皮下注射 |
接種回数 | 1回 | 生後6ヶ月~12歳 2回 13歳以上 1回 |
接種費用 | 従来ワクチン2回分より高い | 今まで通り |
効果 | 同等(※) | |
副作用 | 添付文書(1)に記載されている主な副作用: 鼻閉・鼻漏 59.2%、咳嗽 27.8%、口腔咽頭痛 17.9%、頭痛 11.2% 、発熱 1~10%未満 稀にギラン・バレー症候群や血管炎など重篤な副作用の可能性 他の文献(2)では、2~4歳の気管支喘息発作の可能性や、0.58%の確率でワクチンウイルスが他者へ移ることが示唆されています。 | 添付文書(3)に記載されている主な副作用: 注射部位紅斑 35.3%、注射部位疼痛 29.4% 稀にギラン・バレー症候群や血管炎など重篤な副作用の可能性 |
その他 | 接種後一定期間は、インフルエンザ抗原検査が陽性となる可能性あり(1) |
※フルミスト点鼻®と従来ワクチンの効果については、どちらが優れているか現在も議論が続いており、本記事作成時点では同等と判断するのが妥当と判断しました。
本記事の内容は、フルミスト点鼻®について、私(岡田 悠)が診療を行う際の説明を補助する目的で作成しております。他院でのフルミスト点鼻®の接種や当院の受診を前提としない患者様・ご家族の判断について、当院は一切の責任を負いませんので、ご了承ください。
- 第一三共株式会社. 経鼻弱毒生インフルエンザワクチン フルミスト点鼻液. 添付文書. 2023年3月作成(第1版)
- Flor MM, Morven SE. Seasonal influenza in children: Prevention with vaccines. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed on Aug 16, 2024.)
- BIKEN. インフルエンザHAワクチン. 添付文書. 2024年7月改訂(第7版)